2021年12月10日金曜日

再エネを100%にしたときに必要な蓄電容量

  2050年に、電力を再エネ100%にできると主張する方々がいらっしゃいますが、風力と太陽光は気象に左右されますので、現在は電力を安定的に供給するには火力発電が必要です。将来的に火力発電を蓄電に置き換えることで火力の割合を減らすことができますが、日本全体で電力を安定的に供給するためには、どのくらいの蓄電容量が必要になるか計算してみました。

 まず、再エネのなかでも蓄電のいらない比較的安定的に電力供給できる水力や地熱、海流発電の割合ですが、現在水力は電力全体の7~8%です。小水力などが普及したとしてもせいぜい10%程度でしょう。地熱や海流発電はポテンシャルはあるものの、まだどうなるかわかりません。バイオマスもたいして増えないでしょう。地熱、海流、バイオマス合わせて5%程度供給できるとして、水力も合わせて15%程度と想定すると、残りの85%を風力と太陽光で供給するとなると蓄電が必要になります。

 蓄電容量ですが太陽光なら雨や曇りだとほとんど発電できませんので、雨や曇りがどのくらい連続するか?風力なら風が弱い日がどれだけ続くか、地域によって差も多きいと思いますが、日本全体で電力を融通できるとしたら7日分くらいあれば安定的に供給できるのではないかと思います。(発電所の場所と地域別の気象データーで精密に計算する必要はあるでしょうけれど、ここではおおよその規模を計算したいので7日分と考えます。

 日本の総電力需要は現在1兆kWhで、30年後も同じ*として、その85%を太陽光と風力が必要だとすると年間8500億kWh、7日分蓄電するとなると163億kWh分の蓄電が必要になります。
雨天が続きかつ風が吹かない日が続くということは考えにくいので、実際はこの6~7割くらいあれば足りるのではないかと考えます。
 季節変動も考えないといけませんが、夏場など冷房で電力需要が多いのですが、暑くて電力需要が多いときは晴天率も高いので7日分の蓄電容量は不要になると考えられます。

 以上より、おおよそ100億kWh分の蓄電があれば全て再エネ100%にできるのではないでしょうか?その設備コストですが、1kWhあたり1万円とすると100兆円です。10年の寿命だとすると年間10兆円、国民一人当たりの負担は年間約10万円
 kWhあたり1000円になれば10兆円、10年の寿命だとすると毎年1兆円です。国民一人当たりの負担は年間約1万円、このくらいになると現実的かもしれません。

 もし、乗用車が100%EVになったとして、平均蓄電池容量が平均100kWhで5000万台とすると蓄電容量は合計で50億kWh分、多くの乗用車はあまり使われていないので、この半分くらいは再エネ電力の安定化に利用できる可能性もありますし、各家庭で蓄電すると有利な政策など考えれば電力会社が設置する蓄電容量は減らせる可能性もあります。

 ここでは、素人の思いつきでの概算ですが、再エネを拡大を叫んでいる方々にはもっと精密な計算や見通しなどから再エネ100%のミックス、蓄電容量、そのコストなどを示してほしいと思います。

 *2050年の年間電力需要ですが、さらなる省エネ、高断熱住宅やオフィスの普及、産業構造の変化、人口の減少などで20%の2000億kWh削減、EVが2000億kWhで現在と同じ約1兆kWhとしました。

2021年11月22日月曜日

日本の車が全てEVになった時に必要な電力

日本の乗用車とトラックすべてが電気自動車になったら、どのくらいの電力量が必要か、ガソリンと経由の消費量から計算してみました。

国土交通省の自動車燃料消費量統計にガソリン車両と軽油車両の総走行距離も出ています。

平成28年統計では
年間のガソリン供給量は51300千キロリットル
軽油は25443千キロリットルです
ガソリン車の総走行距離は
605,458百万km
軽油車は
115,549百万km
平均燃費はガソリン車11.8km/リットル
軽油車はトラックバスなど大型車がほとんどなので、
平均約4.5km/リットルです。
電費ですが日産リーフやテスラなどの情報や現状の燃費から
ガソリンエンジンを置き換えた乗用車を置き換えた場合の平均を
5km/kWh
軽油車を使うディーゼルエンジンのトラック、バスをEVに置き換えた場合の平均を
1.5km/kWh
として計算して、総走行距離を掛け算してみます。
ガソリン車(主に乗用車)分の年間必要電力はおおよそ
1200億kWh
軽油車分(主にトラック、バス)でおおよそ
800億kWh
合計で
2000億kWh
現状、日本の総電力需要は約1兆kWhなので20%ほどになります。
これを365日24時間で平均すると
約2300kWの発電所が必要
30年後だとするとさらなる節電、人口減少、高断熱住宅やオフィス普及、産業構造の変化などで今の供給量で足りるだろうし、EVの蓄電池で電力平準化にも役立つはずなので再エネの拡大にもなるはずです。
ということで、発電所を大幅に増やす必要はなくEVの電力はまかなえる計算になります。
「発電に化石燃料を使ったら、ガソリンや軽油を使う内燃機関の車と二酸化炭素排出量は同じではないか?」と考える人がいますが、これも計算してみましょう。
二酸化炭素排出量は最新の石炭ガス化コンバインドサイクルや、ガスコンバインドサイクルでは、
石炭発電、kWhあたり650g (1700℃級IGCC)
ガス発電、kWhあたり310g (1700℃級GTCC)
だそうです。 

2000億kWhだとそれぞれ 0.65kg/kWh、0.31kg/kWhをかけると
1300億kg、620億kg

これをエンジンに置き換えると
ガソリンは1リットルあたり2.323kg
軽油は1リットルあたり2.619kg
年間消費量のガソリンと軽油
51,300,000klと25,443,000kl
にそれぞれ掛算すると約1191億kgと666億kgになる
合計で1857億kgで、石炭発電よりも劣る計算になります。

もちろん、内燃機関もハイブリッド化で二酸化炭素排出量は削減できますが、自動車で二酸化炭素を回収することは困難です。発電であれば二酸化炭素の回収は可能ですし、再生エネルギーの拡大により、二酸化炭素の削減が可能です。
再エネが拡大すれば、太陽光や風力で電気が余る時間帯に格安で充電するなども可能になるでしょう。
資料

2020年4月6日月曜日

新型コロナ関係 COVID-19 関係 リンク集

新型コロナウイルスに関する情報発信しているサイトを集めてみました。
複数の情報を確認することで誤った情報などに惑わされないように判断しましょう。

公的機関
 厚生労働省
   帰国者接触者相談センター
   新型コロナ心のケア
 NIID 国立感染症研究所
 外務省
   内閣官房新型コロナ対策
 独立行政法人製品評価技術基盤機構の消毒に関する評価
 日本学術会議特設サイト

地方自治体
 神奈川県
 東京都感染症情報センター
  東京都感染者動向

民間団体 大学
 日本救急医学会
 東京都医師
 日本医師会
 日本赤十字社
 新型コロナウイルス感染症に関する専門家有志の会
 日本疫学会
 日本公衆衛生学会
 札幌医科大学
 ジョンホプキンズ大学特設サイト
 国境なき医師団

海外公的機関
 WHO
 CDC アメリカ合衆国
 ニューヨーク州新型コロナ特設サイト
  ニューヨーク州集計
 ECDC ヨーロッパ
 フランス政府入国者向け新型コロナ情報
 中国広東省人民政府

報道機関
   感染速報
 日経特設サイト
 NHK特設サイト
 東洋経済特設サイト
 東京新聞、東京都内の集計
 NNN
 ファクトチェックイニシアチブ 新型コロナ特設サイト

海外報道機関
 DW ドイツ
 BBC
 France24

その他
 横浜市立大学データサイエンス学部佐藤彰洋教授
 山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信

2019年12月21日土曜日

ガス火力発電は石炭火力発電より温室効果ガスの発生が本当に少ないのか?

発電時の二酸化炭素排出量は、炭素の塊である石炭発電が水素原子を含む炭化水素ガス発電より多くなる。世界的にも環境団体などから石炭発電が反対されているのは、二酸化炭素排出量がガス発電より多いからだ。
しかし、ガス発電はガス採掘時を含めて本当に温室効果ガスの放出量は少ないのだろうか?
ちょっと調べてみると、天然ガスの採掘で数パーセントのガスが大気中に漏れてしまうようだ、数パーセントから多い場合は十数パーセントが漏れているらしい。シェールガスもフラッキング時に地中から外にガスが出る可能性もある。
天然ガスの主成分はメタン、メタンは二酸化炭素の25倍も温室効果があるそうだ。メタンは大気中で酸素と反応して二酸化炭素と水になるが、十年以上は大気中で存在することになるので、大量に放出されれば地球温暖化に影響する。
そう考えると、石炭発電よりガス発電の方が温室効果ガスの放出が少ないと単純に言えないのではないか?

そこで、計算してみよう。
石炭の二酸化炭素排出量は0.0247tC/GJ 1ギガジュールあたり炭素量で24.7kg
天然ガスの二酸化炭素排出量は0.0135tC/GJ 1ギガジュールあたり炭素量で13.5kg
これを1気圧での二酸化炭素の容量に換算すると
それぞれ、
46.1立方メートル
25.2立方メートル
1GJの発熱量を得るために必要な天然ガスの量は
約40MJ/㎥ですから、
25立方メートル

ここで、25立方メートルの天然ガス生産時に漏れるメタンが3%とすると、
漏れ量は0.75立方メートル
これを二酸化炭素の温室効果換算すると25倍だから、
約18.8立方メートル
これと発電時の二酸化炭素排出量と足すと 25.2+18.8=44.0
石炭と比較してわずかに少ない。

もし、天然ガス生産時に漏れるメタンが4%になると、1立方メートル漏れるので、
二酸化炭素換算では25立方メートル
石炭発電の温室効果ガス排出量を上回ってしまう。

石炭採掘でガス漏れはないとして計算しているが、実際、天然ガスの採掘時の漏れ量は十数パーセントという場合もあるらしいし、不純物として二酸化炭素や他の温室効果ガスもでるわけで、採掘まで含めると天然ガス発電の温室効果ガス発生量が少ないとは限らないことになる。

参考情報
https://www.nikkei.com/article/DGXLASGM19H0O_Z10C15A8EAF000/
http://tenbou.nies.go.jp/news/fnews/detail.php?i=10246


2019年8月10日土曜日

石から出来た紙は燃えます

石から出来た紙と宣伝されているストーンペーパー、「石だから燃えない」とか、「不燃性でしょ」と誤解されている方がいらっしゃいました。
実際は、ポリプロピレンやポリエチレンなどのプラスチックが体積の大半を占めているため、良く燃えます。不燃性と誤解して、ストーブやコンロなど炎に触れるような使い方をされると危険ですので注意しましょう。

試しに燃やしてみました。
ポリプロピレンの引火点は300度程度です。




本当にエコなのか話題になっています。

2019年5月1日水曜日

風力発電とバードストライク

風力発電の増加で、風車でのバードストライクはカウントしやすく目立つので問題視され、風力発電のネガティブキャンペーンに使われることが多いですが、どの程度問題なのか調べてみました。実際に鳥類が被害を受ける原因は何があるのでしょう。

2005年のアメリカの論文によると、年間の鳥類被害の原因は

ビル 5億5千万件
送電線 1億3千万件
猫類(飼い猫、野良猫)の被害 1億件
自動車への衝突 8千万件
農薬 6千7百万件
通信塔 4百50万件
風車 2万8千5百件
航空機 2万5千件

この情報を見ると、特に対策すべきは、ビルです。ガラス張りの高層ビルを制限するほうが鳥類への影響を減らせるかもしれません。次は送電線でしょう。
風力発電での被害が多くないのは、集計した時点での風車の数が少ないから少ないのですが、風車が1000倍に増えても3千万件です。送電線が増える方が鳥類に与える影響が大きいかもしれません。風力以外の発電だからバードストライクは無いという事にはなりませんから、送電線の地下化や、中央集権型の長距離送電ではなく、地産地消の電力の普及を進める事で減らせるかもしれません。

風車でのバードストライクは猛禽類など特定の鳥類が被害に遭いやすなどがあるようですし、対策はもちろん必要だと思います。しかし、目立つからとそこばかり騒ぐのではなく、情報を良く確認して、大きな原因から手を打ってゆく必要があると思います。

参考資料
A Summary and Comparison of Bird Mortality fromAnthropogenic Causes with an Emphasis on Collisions

http://www.yamashina.or.jp/hp/yomimono/windpower_and_birds.html

2019年4月25日木曜日

ブレインストーミングで原発トラブルの問題抽出?

電力会社のトラブル対策資料がウエブページに出ていたのですが

資料を読むと
「H17上期のトラブル30件の要因を、マネジメント(集団)、人(個人)、インターフェース(集団と個人、個人と個人) の該当項目にチェックを入れ、それぞれ要因を書き出して、ブレーンストーミングにより主要共通事項を抽出」
と書かれている場所がありました。

ブレインストーミングと言うのはアイデア出しのツールです。通常は奇想天外なアイデア出しに使うものです。トラブル対策のアイデア出しに使うならともかく、網羅的に何かを抽出するのに使うというのは間違っているのではないでしょうか?

ブレインストーミングは思いついても思いつかなくても良いことに使うものですから、抽出漏れが発生する可能性があります。このような会社が原発を動かしていて大丈夫なのでしょうか?ちょっと不安になりました。

もちろん、何もやらないよりも良いとは思いますが、

資料は
http://www.atom.pref.fukui.jp/senmon/dai25kai/no3.pdf